葉っぱの間から、午後の日差しに揺れる川面が見える。水が見える部屋に引っ越したいな、とふと思う。
立ち寄った本屋で集英社が創刊した『kotoba』という季刊誌を見つけ、そのまま喫茶店。サブタイトルには「多様性を考える言論誌」とある。というわけで創刊号のテーマはずばり「生物多様性はなぜ必要なのか」。印象としては『風の旅人』と『考える人』の間という感じで、ぱらぱら読んでみて面白い原稿もあったが、全体としては多様性の高い雑誌だなあと思いました(笑)
これも多様性ということなのかわからないが、小熊さんのインタビューも掲載されている。前半は最新作『1968』に関連した話しなのだが、最後の部分にはっとさせられる発言があった。「次はどんな思想が現れてくるか」という質問に答えて小熊さんはこう述べている。
ゼロ成長が当たり前になったいまから考えると、どんどん新しい本を買って、欧米の新しい思想を仕入れて、「次は何」と問い続けるという風潮は、明治以降の「欧米に追いつけ追い越せ」という近代化と発展のエートスの延長上にあったと思います。80年代のニューアカデミズムの時期には、「知」が流行になるところまでいった。しかしゼロ成長の時代に育った最近の大学生を見ていると、そういうエートスは共有されていませんね。(中略)
「J回帰」という言い方が一時期されたことがあるけれども、よくも悪くも、日本の状況に即した思想が現れてくると思いますね。「欧米に追いつけ」とばかりに、最新思想を輸入してくる時代ではもうない。これは洋楽が売れなくなったのと似ていますね。国際性がないかもしれませんが、地に足がついてくるという点ではいことかもしれません。
ただ気になるのは、社会が拡散するなかで、全体を把握しようとする意識の希薄化が感じられることです。専門的な知識の裏付けはあるけれども細かい議論と、広いけれども雑駁で荒っぽい議論に二極分化してしまうのは、あまりよい傾向だと思いません。
しかし若い世代の台頭とともに、自然と何か出てくるものだと思う。否でも応でも人間はものを考えますから。
ふう、引用が長くなりました。
これを読んで、最近漠然と感じていた閉塞感のようなものの正体が少しわかったような気がした。目の前ばかりを見るのではなく、一度引いてみることはやはり大切ですね。
おっとここで上司から電話。そろそろいかなくては。それにしてもここの豆乳プリンは甘すぎないのがいいな。